俺は周りとは違うかも?
そう思ったのは、中学生のとき。
「好きな女の子のタイプは?」
この質問。多くの人にとってはごく普通の質問。みんな、髪の長い子、目が大きい子、年上とか年下とか、いろんな答えがあった。
でも、俺は何か違和感を感じた。
「好きな『男の子』じゃダメなのかな?」
って。
でもこれって、多分、気の迷い。
俺はこれからきっと、女の子を好きになるときが来るんだ。大丈夫、きっとその時がくる。
そう思った。
そんなとき、彼女ができた。
告白は向こうから。自分のことを好きになってくれて、素直に嬉しかった。それから、何回かデートした。
確かに、一緒にいると楽しい。話も尽きない。すごく充実してる。
でも、何かが違う。
手をつなぐのはすごく抵抗があったし、キスもセックスもしたくなかった。
なぜ?
連日悩んだ。思春期のカップルらしくない。自分は何かがおかしい。
結局、そんなことが察されたのか、別れてしまった。
一方で、
同級生の「男の子」には違う感情があった。
周りのみんなが好きな子に対して抱く、あの感情。
その子のことがすごく好きだった。格好良くて、頭が良くて、すごく輝いてた。あの子と付き合えたら・・・
でも、そんなことを打ち明けられるわけもなかった。
保健の教科書には、
「思春期になると、『異性』のことを意識し始めるようになります」
って書かれてた。
誰もがスルーしてきた記述だけど、俺にとっては残酷な記述だった。
教科書は絶対正しい。正しいことしか書いてない。俺が間違ってる。
じゃあ、どうする?
こうして俺は思った。
「嘘をついて生きていこう」
って。
女の子が好きだ、っていう嘘を。